あふれ呼とは?発生原因や対策方法を解説
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コールセンターに電話が集中し、電話がつながらないことで発生してしまう「あふれ呼」。企業イメージの低下や機会損失につながる可能性もあることから、あふれ呼が頻発している場合は適切な対策が求められます。
本記事ではあふれ呼の概要を解説しつつ、あふれ呼の発生原因やそれが引き起こす問題、削減のための対策方法をご紹介します。
1.あふれ呼とは
あふれ呼とは、コールセンターに電話が集中し、オペレーターにつながらない状態を指す言葉です。文字通り、つながらないコール(=あふれた呼)が発生している状態を表します。読み方は「あふれこ」です。
あふれ呼は、以下いずれかの場合に発生します。
・入電数が電話回線数を上回った場合
・入電数に対してオペレーターが不足している場合
コールセンターに電話をかけた顧客に対して「ただいま電話が大変混み合っております。しばらくお待ちください」といったガイダンスを流して待機させることがあると思います。これが、あふれ呼が発生している状態です。
待ち呼との違い
一般的に、「待ち呼」はあふれ呼と同じ意味の言葉として使用されることが多いです。
ただし、以下のように両者を区別するケースもあります。
あふれ呼 | 電話回線数を超える入電数があり、電話がつながらない状態 |
待ち呼 | 入電数は電話回線数を超えないものの、電話がつながらない状態 |
あるいは、着信をキューに並べて順番に対応するための「機能」を指して待ち呼と呼ぶこともあります。
放棄呼との違い
放棄呼とは、オペレーターにつながる前に切れてしまったコールのことです。「コールセンターに電話をかけたものの、オペレーターになかなか電話がつながらない状態」である点はあふれ呼と同じですが、放棄呼はさらにその先にある「保留時間の長さから、顧客がオペレーターへの接続を待ち切れずに切断した状態」になります。
簡単に図で示すと、両者の関係性は以下のようになります。
【あふれ呼と放棄呼の関係】
1)コールセンターに電話が集中する
⇓
2)顧客を待たせる(あふれ呼が発生)
⇓
3)顧客が待ち切れず電話を切る(放棄呼が発生)
2.あふれ呼の発生原因
あふれ呼が発生する原因は、主に以下の4点です。
・特定のタイミングで増加する入電数を把握できていない
・入電数とリソースのバランスが取れていない
・コールセンターの応答率が低い
・問い合わせ手段が電話しかない
特定のタイミングで増加する入電数を把握できていない
コールセンターには入電が増加するタイミングがあります。例えば、下記のようなタイミングです。
・休業日の翌日
・お昼休みの時間帯
・キャンペーンやイベント実施の直後
「自社で扱っている製品・サービスがBtoCかBtoBか」など、企業の状況によっても変わりますが、上記のような入電が増えるタイミングの傾向を把握・予測せず、適切な人員配置を行わずにいると、あふれ呼が発生しやすくなると言えます。
入電数とオペレーター数のバランスが取れていない
言うまでもなく、コールセンターへの入電数に対してオペレーター数が少ないと、すべての入電に対応できないため、あふれ呼が発生します。
日々コールセンターにかかってくる入電数と必要なオペレーターのバランスが取れてない場合は、恒常的にあふれ呼が発生する恐れがあります。
コールセンターの応答率が低い
コールセンターにおける「応答率の低さ」もあふれ呼の発生を招く原因となります。
応答率とは、「コールセンターへの入電数に対してオペレーターが対応できた割合」のことです。応答率が低い状態は、オペレーター1人あたりが対応できている電話件数が少ない(コールセンター全体で対応できる件数の総量を低下させている)ことを意味するため、結果的にあふれ呼を発生させる原因となるのです。
応答率が低下する理由としては、上述した「入電数とオペレーター数のバランスが取れていない」ことのほか、以下のような事柄が挙げられます。
・AHT(平均処理時間)が長い
・オペレーターのスキルに差がある
問い合わせ手段が電話しかない
顧客による自己解決を促す仕組みがない場合も、あふれ呼が発生しやすい状態にあると言えます。コールセンターを利用する顧客は、何らかの疑問・問題の解消を目的に電話をかけますが、そうした悩みの解決手段が電話しかない場合、当然ながら問い合わせ先はコールセンターに集中してしまいます。
コールセンターへの入電数を抑える対策としては「FAQページの設置」や「チャットボットの導入」などが考えられますが、これらの仕組みが顧客にとって「使いづらい」「わかりづらい」という場合も、結局コールセンターに問い合わせることになり、あふれ呼の発生原因となります。
※上記の対策については本記事の「4.あふれ呼対策の方法」でご紹介します。
3.あふれ呼が引き起こす問題
ここでは、あふれ呼対策を行わないとどのような問題が起こるのかを解説します。具体的にあふれ呼が引き起こす問題点として挙げられるのは、以下の3つです。
・企業イメージの低下につながる
・機会損失につながる
・オペレーターの負担が増える
企業イメージの低下につながる
あふれ呼は「顧客が待たされている」状態です。何らかの悩みを解決するために問い合わせているのになかなか電話がつながらない状況は、顧客にとってストレスになります。こうした不満が蓄積されれば、製品・サービスひいては企業に対するイメージの低下を招く恐れがあります。
機会損失につながる
顧客の購買行動に直結するコールセンターの場合、あふれ呼が機会損失につながる可能性があります。
例えば、「製品・サービスの購入に迷っていて、不明点があって問い合わせた」という状況で電話がつながらなければ、顧客が購入を諦めてしまうことも考えられるでしょう。
あふれ呼と放棄呼の違いで解説したように、あふれ呼の先には「放棄呼」があります。なかなか電話がつながらず、電話を切断されてしまえば、せっかく自社の商材に興味を持ってくれた新規顧客を逃すことになってしまいます。
オペレーターの負担が増える
あふれ呼が発生している状況は、言い換えれば、オペレーターのキャパシティを超えている状態です。ただでさえスピーディーにあふれ呼に対応しなければならないため、オペレーターには決して小さくない負担がかかります。
また、あふれ呼の発生によって待たされた顧客からクレームが入ることもあるため、入電数とオペレーター数のバランスが取れている場合と比較すると、1件あたりの電話対応にかかる精神的なストレスも非常に大きくなります。
4.あふれ呼対策の方法
あふれ呼を削減するための対策としては、以下のようなオーバーフローを起こさないための取り組みが必要です。
1)コールセンターの規模を拡大する
2)アウトソーシングサービスを利用する
3)顧客が自己解決できる仕組みを導入する
4)IVRを導入して受付・振り分けを自動化する
1)コールセンターの規模を拡大する
オペレーターの人数を増やしてコールセンターの規模を拡大し、入電数に対応する方法です。もちろん、やみくもに増員すれば必要以上のコストがかかる可能性もあるため、入電数とバランスの取れたオペレーターを確保することがポイントです。
必要なオペレーター数は、AHT(平均処理時間)や1時間あたりのコール数、目標とする応答速度を用いた「アーランC式」という計算式で導き出すことができます。ただし計算式が複雑なため、この手法で必要数を割り出す場合は、自動計算できるWebサイトなどを利用するとよいでしょう。
なお、オペレーターの増員は最もわかりやすい対策ではありますが、採用のコストや育成の手間がかかる方法です。既存のスタッフであふれ呼の削減を目指す場合は、以下の2〜4の対策を取るのが現実的です。
2)アウトソーシングサービスを利用する
あふれ呼の発生を防ぐ対策として、アウトソーシングサービスを利用する方法もあります。この方法は、キャンペーンやイベントの実施後のように、一時的に入電量の増加が予測される場合に特に向いているでしょう。
自社のコールセンターだけでは本来あふれ呼となっていたコールをアウトソーシング先に転送できるため、顧客を待たせない電話対応が実現します。
さらに、自社でオペレーターを採用するときのような採用費・人件費・教育費が基本的にかからないメリットもありますが、一時的な対策であることに留意する必要はあります。
3)顧客が自己解決できる仕組みを導入する
問い合わせ内容を顧客自身で解決できる仕組みの導入は、コールセンターへの入電数の抑制につながり、結果的にあふれ呼の防止にも貢献します。
自己解決を促す仕組みとしては、まず「FAQページ」が挙げられます。自社のWebサイトに「よくある質問」などを掲載することで、顧客による自己解決を促す仕組みです。
このほか、「チャットボット」も自己解決を促す仕組みと言えます。チャットボットはテキストベースのやり取りで、ロボットが顧客からの問い合わせに自動返答するシステムです。
このような電話以外の手段を用いることで、コールセンターへの入電数の抑制が期待できます。
ただし、顧客が「求める情報がFAQページのどこにあるのかわかりづらい」「チャットボットが正確な回答をしてくれない」と感じた場合はコールセンターに問い合わせが集中してしまうため、顧客にとっての「使いやすさ」を考慮しつつ導入することが重要です。
4)IVRを導入して受付・振り分けを自動化する
IVR(自動音声応答システム)は、コールセンターの入電に自動音声で応答するシステムです。「◯◯のお問い合わせは1を、△△は2を……」のように音声ガイダンスを案内し、顧客にプッシュボタン操作を行ってもらうことで、自動回答やオペレーターへの取次ぎを行います。
IVRを導入するメリットは、まず無人で電話受付ができるようになる点です。システムが一次対応をするため、オペレーターが受電する必要がなくなります。
また、IVRは顧客によるプッシュボタン操作で用件をあらかじめ把握できるため、オペレーターが一からヒアリングする必要がなくなるほか、オペレーターの専門性やスキルに応じた電話の振り分けもシステムが自動的に行います。
こうした電話受付・振り分けの自動化によって、オペレーターの1件あたりの対応時間が短縮され、全体的なスピードアップにつながり、結果的にあふれ呼の削減が期待できます。
なお、問い合わせ内容が「よくある質問」であれば、あらかじめ回答となる自動音声を用意しておくことで、オペレーターを介さず対応することもできます。
音声だけでの回答が難しい場合は「SMS送信機能」を併用することで、特定の情報を顧客の携帯電話にSMS送信することも可能です。例えば、顧客の問い合わせ内容の回答として「FAQページ」を案内することで、オペレーターを介さず電話対応を完了させることもできます。
IVRの仕組みや機能、活用シーンについては以下の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はあわせてご覧ください。
IVRの導入・利用に関する費用については、以下の記事で解説しています。具体的な製品の特徴や費用を比較してご紹介していますので、詳しく知りたい方は、あわせてご覧ください。
5.あふれ呼による機会損失を最小化するなら「MediaVoice」
IVRは電話受付・振り分けを自動化するだけでなく、あふれ呼が発生した際に「コールバック予約を自動で受け付ける」機能を備えた製品もあります。このコールバック予約機能があると、あふれ呼が発生した場合でも電話の取りこぼしを防ぐことが可能です。
弊社メディアリンクが提供する「MediaVoice」も、折り返し予約の自動受付を実現するIVRです。あふれ呼が発生した際、システムがオペレーターの空き時間を自動的に案内し、顧客に予約を行ってもらう仕組みです。
受付情報はコールセンターのオペレーターにメールで通知されるほか、管理画面上でも確認可能。あふれ呼による機会損失の抑制に貢献します。
MediaVoiceについて詳しく知りたい方は、ぜひ以下のページをご覧ください。