カスハラ対応・対策マニュアル:
企業が実践すべき具体的な方法と事例

IVR

UPDATE :

近年、顧客からの過度な要求や暴言など、カスタマーハラスメント(通称:カスハラ)が社会問題として注目を集めています。

 

本記事では、企業がカスハラから従業員を守るために取るべき具体的な対策と、実際に発生した場合の適切な対応方法について、実践的な観点から解説します。

1. カスハラとは?

カスタマーハラスメントは、企業が直面する重大なリスクの一つです。顧客からの不当な要求や言動に対して適切な対策を講じるためには、まずその本質を理解する必要があります。本セクションでは、企業経営の観点からカスハラの定義や影響、該当する行為について詳しく解説します。

カスタマーハラスメントの定義

カスタマーハラスメントとは、顧客が企業の従業員に対して行う「度を超えた要求」や「不当な言動」のことを指します。単なるクレームや要望とは異なり、従業員の尊厳を傷つけたり、心身の健康を害したりする行為が該当します。企業活動における正当な取引関係や、顧客満足の追求を超えた一方的で攻撃的な行為として認識されています。

カスハラが企業と従業員に与える影響

カスハラは、直接的な被害を受ける従業員だけでなく企業全体に深刻な影響を及ぼします。従業員個人においては、モチベーションの低下やメンタルヘルスの悪化、最悪の場合は退職につながることもあります。企業としても、従業員の離職による人材損失、残された従業員の士気低下、さらには企業イメージの毀損など、経営上の大きなリスクとなります。

代表的なカスハラ行為

カスハラに該当する行為は多岐にわたりますが、主に以下のような行為が挙げられます。

・威圧的な態度や大声での威嚇、脅迫的な言動
・理不尽な要求や過度に執拗なクレーム
・従業員の容姿や個人的な特徴に関する侮辱的な発言
・従業員の個人情報を特定しての嫌がらせや、SNSでの誹謗中傷
・長時間の居座りや営業妨害
・性的な言動やセクシュアルハラスメント

これらの行為は程度の差こそあれ、いずれも従業員の尊厳を傷つけ、安全な職場環境を脅かす重大な問題として認識する必要があります。

なお、カスハラが発生するシーンは「対面」や「電話」などさまざまですが、特に電話においては相手の顔が見えない分、発言がエスカレートすることがあります。本記事の下部でもご紹介しますが、そうした電話によるカスハラの防止には、IVR(自動音声応答システム)が役立ちます。

電話によるカスハラ防止にも役立つIVR
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以下の記事ではコールセンターで起こり得るカスハラ事例などをご紹介していますので興味のある方はあわせてご覧ください。

コールセンターのカスハラ事例と対策:現場での対応ポイント

カスハラとクレームの違い

カスハラとクレームは、どちらも顧客からのフィードバックという形を取りますが、その本質は大きく異なります。

クレームは、商品やサービスに対する正当な改善要望や指摘であり、企業の成長に欠かせない貴重な情報です。一方、カスハラは従業員の尊厳を傷つけ、心身の健康を害する不当な言動です。両者の境界線を見極め、適切に対応することが重要です。

両者の違いについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。

カスハラとクレームの違い:両者を区別する判断基準とは?

2. カスハラの具体的な事例

カスハラへの効果的な対策を講じるためには、実際にどのような事例が発生しているのかを理解することが重要です。ここでは、企業の現場で起きているカスハラの事例をいくつか紹介します。

事例1:接客時の説明不足を理由に大声で怒鳴り続ける

顧客が商品の返品を求めて来店したものの、返品・交換の期限が過ぎていることを説明され、店内で大声を出し始めたケース。「客を馬鹿にするのか」「説明が不十分だった」などと主張し、周囲の顧客がいる中で、長時間にわたり店員を威圧し続けました。このような行為は該当の従業員だけでなく、他の顧客にも不安を与え、店舗の営業活動にも支障をきたします。

事例2:要望に応えられないことを理由に長時間の居座りや営業妨害を行う

企業の規定外のサービス提供方法を要求する顧客が、その要望を断られた腹いせに店舗に居座り続けるケース。「上司を呼べ」「謝罪が不十分だ」などと主張し、営業時間を超えても退店せず、通常の営業活動を妨害します。このような行為は、従業員の時間外労働を強いることにもなり、労務管理の観点からも問題となります。

事例3:従業員の個人情報をSNSで拡散すると脅す

接客時の対応に不満を持った顧客が、従業員の名札から名前を特定し、「SNSで拡散して社会的に制裁を加える」などと脅すケース。実際の投稿の有無に関わらず、このような脅しは従業員に強い精神的苦痛を与え、通常業務の遂行にも支障をきたす可能性があります。

これらの事例は、いずれも顧客としての正当な権利の主張を超えており、企業として毅然とした対応が求められます。次節では、このようなカスハラの発生に備えて、企業が取るべき具体的な対策について解説していきます。

3. カスハラの発生に備えて企業が取るべき対策

カスハラから従業員を守り、安全な職場環境を維持するためには事前の備えが不可欠です。ここでは、企業として実施すべき具体的な対策について解説します。

カスハラの発生に備えて企業が取るべき対策をまとめた図

企業としての対応方針を策定し周知する

カスハラへの対応において最も重要なのは、企業としての明確な方針を示すことです。経営層が主導して以下のような内容を含む基本方針を策定し、全社に周知する必要があります。

・カスハラを許容しない企業姿勢
・従業員の安全と健康を最優先する方針
・顧客対応における基本的なルール
・組織的な支援体制

従業員が相談できる体制を整備する

カスハラが発生した際、従業員が躊躇することなく報告・相談できる環境を整えることが重要です。具体的には以下のような体制を構築します。

・相談窓口を設置する
・相談者のプライバシー保護を徹底する
・上司や人事部門との連携体制を確立する
・外部の専門家(弁護士、カウンセラーなど)との連携を構築する

発生時の対応方法と手順を定める

カスハラが発生した際に、現場の従業員が適切に対応できるよう、具体的な手順と判断基準を定めておく必要があります。対応手順の整備にあたっては、以下の点に取り組みます。

・初期対応の具体的な手順を定める
・エスカレーションの基準と方法を設定する
・警察への通報が必要となる場合の判断基準を明確化する
・記録の取り方と報告方法を標準化する

また、現場での判断をスムーズにするため、以下のような事柄を明確にしておきます。

・カスハラと判断する具体的な基準
・複数人での対応が必要となる状況の定義
・上司への報告が必要となるケース

従業員にカスハラ対応の教育・研修を実施する

策定した方針や手順を効果的に運用するためには、定期的な教育・研修が欠かせません。研修では以下の内容を取り入れます。

・カスハラの定義と具体的な事例
・ロールプレイングによる適切な対応方法の実践
・記録の取り方や報告方法の習得
・メンタルヘルスケアの基礎知識

また、効果的な教育を実施するために以下の方法で計画的に進めることも重要です。

・新入社員研修で基礎教育を実施する
・定期的なフォローアップ研修を行う
・管理職向けのマネジメント研修を実施する
・事例に基づく実践的なワークショップを開催する

これらの対策は一度実施して終わりではなく、定期的な見直しと更新が必要です。実際の事例や従業員からのフィードバックを基に、より効果的な対策へと改善を重ねていくことが重要です。

4. カスハラが発生した場合に企業が取るべき対応

カスハラが発生した場合、企業には迅速かつ適切な対応が求められます。ここでは、発生時の具体的な対応手順と、その後の再発防止に向けた取り組みについて解説します。

カスハラが発生した際に企業が取りべき対応をまとめた図

事実確認を行い事案に対応する

カスハラ事案が発生した際、特に重要なのは初期対応です。的確な初期対応により、状況の悪化を防ぎ、適切な解決への道筋をつけることができます。

発生直後は、まず以下の対応を速やかに実施します。

・複数の従業員で対応チームを編成する
・客観的な事実確認と記録を開始する
・状況に応じて顧問弁護士に相談する
・必要に応じて警察等の関係機関に通報する

さらに、組織として確実に対応を進めていくために、以下の取り組みが必要です。

・部門間で情報を共有し、組織的な対応方針を決定する
・対応状況を定期的に記録・報告する
・関係者間で認識の齟齬が生じないよう情報を集約する
・必要に応じて対外的な対応方針を検討する

被害を受けた従業員をケアする

カスハラの被害を受けた従業員への支援は、企業の重要な責務です。心身の健康を最優先に考えた対応が必要です。

まず、被害を受けた従業員に対して直接的な支援を行います。

・業務上の負担を軽減する
・必要に応じて業務内容や勤務場所の変更を検討する
・産業医との面談機会を設ける
・外部の専門家によるカウンセリングを提供する

また、安心して業務に取り組める職場環境を整備することも重要です。例えば、以下のような取り組みを実施します。

・周囲の従業員にも適切な情報共有を行う
・職場全体でサポート体制を構築する
・プライバシーの保護を徹底する
・平常業務への復帰に向けた段階的な支援を行う

再発防止に取り組む

カスハラ事案の収束後は、同様の事案が発生しないよう再発防止策を講じることが重要です。

まず、発生した事案について以下のように詳細な分析を行います。

・発生要因と経過を詳細に分析する
・既存の対応手順の問題点を洗い出す
・社内の報告・連絡体制を見直す
・従業員からのフィードバックを収集する

この分析結果を基に、次のような具体的な防止策を実施していきます。

・対応マニュアルを更新する
・従業員教育の内容を見直す
・必要に応じて新たな対策を導入する
・定期的なモニタリングを実施する

これらの対応を確実に実施することでカスハラ被害から従業員を守り、安全で働きやすい職場環境を維持することができます。また、対応の経験を組織の知見として蓄積し、より効果的な防止策の構築につなげていくことが大切です。

5. 電話によるカスハラの防止にはIVRが有効

ここまでカスハラへの基本的な対策と対応方法について解説してきました。本セクションでは、電話対応という特に注意が必要なシーンにおける、システムを活用した効果的な予防策を紹介します。

電話は、従業員が顧客から直接カスハラを受けやすいコミュニケーション手段の一つです。相手の表情が見えない分、言葉による威圧や脅しがエスカレートしやすく、また録音されていない通話では事実確認も難しくなります。このような電話特有のリスクに対し、システムによる予防的な対策としてIVR(自動音声応答システム)の活用が効果を発揮します。

IVRを導入するメリット

電話対応の入り口にIVRシステムを導入することで、以下のような効果が期待できます。

・通話内容の録音を事前にアナウンスし、過度な要求を抑制する
・対応時間や受付時間を明確に設定し、深夜・早朝の対応を防ぐ
・適切な部署への転送により、従業員の負担を分散する

IVRを導入するなら「DXでんわ」がおすすめ

メディアリンクが提供する「DXでんわ」は、電話によるカスハラの防止にも貢献するIVRです。活用方法はさまざまですが、例えば、以下のようなパターンが挙げられます。

パターン1:
IVRで用件を特定し、クレーム電話の場合は専門の部署に直接転送する

パターン2:
クレーム電話はすべて自動応答とし、有人で折り返す対応に一本化する

「DXでんわ」には電話相手の用件を録音・テキスト要約する機能も搭載されているため、例えばパターン2の場合は、まず電話相手のクレーム内容を把握し、対応方法を検討してから折り返すといった運用も可能です。

もちろん、カスハラを未然に防止するだけでなく、日々の電話業務を効率化する機能も豊富に備えています。電話業務の負担を軽減し、従業員の方が本来の業務に集中できる環境づくりを推進されたい方は、ぜひ「DXでんわ」のご利用をご検討ください。

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