通話録音は有効なカスハラ対策!
導入メリットや違法性を解説

カスハラ対策が義務化される法案が可決・成立したことに伴い、多くの企業が本格的な対策に取り組み始めています。このうち、電話対応におけるカスハラ対策として注目されているのが、通話録音システムの活用です。
本記事では、通話録音システムを導入するメリットや、企業が通話録音を行う法的な問題の有無など、通話録音によるカスハラ対策を行ううえで知っておくべき情報を解説します。

1. カスハラ対策として通話録音を導入するメリット
カスタマーハラスメント(カスハラ)対策として、通話録音システムの導入が企業や自治体で注目を集めています。通話録音は単なる記録手段を超えたカスハラ対策ツールとして機能し、以下の4つの主要なメリットを提供します。
- メリット1:カスハラ行為の客観的証拠を残せる
- メリット2:録音の事前通知でカスハラを抑止できる
- メリット3:電話対応を行う従業員の安心感が向上する
- メリット4:奨励金や補助金の対象になりうる
メリット1:カスハラ行為の客観的証拠を残せる
通話録音を行う1つ目のメリットは、カスハラ行為の客観的証拠を確保できることです。従来多くの企業が悩まされてきた「言った・言わない」のトラブルを根本的に解決し、事実に基づいた対応が可能になります。
特に、暴言や脅迫といった理不尽な行為があった場合には、法的対応時の有力な根拠にもなります。録音データは裁判においても証拠能力を持つため、悪質なカスハラ行為に対して適切な法的措置を検討する際の重要な材料となります。また、一部だけではなく「入電から終話まで」の全通話録音を行うことでより公正な記録になりやすいです。
メリット2:録音の事前通知でカスハラを抑止できる
通話録音システムには、カスハラ行為そのものを未然に防ぐ抑止効果があります。「当通話は録音しております」のように事前アナウンスすることで、潜在的なカスハラ行為に歯止めをかけることが可能です。
この心理的効果は実際の現場でも確認されており、電話受付の前に「サービス向上のために録音する」というメッセージを流すようにしたところ、客からの暴言が減ったという事例が報告されています。こうした抑止効果は自治体レベルでも注目されており、実際に導入する自治体が増加しています。
メリット3:電話対応を行う従業員の安心感が向上する
通話録音の導入は、従業員の精神的負担を軽減する効果も期待できます。録音が行われていることを知っているだけでも、職員は安心して業務に取り組むことができます。
カスハラは従業員のメンタルヘルスに悪影響を与え、離職のリスクを高める原因です。対策を怠れば「安全配慮義務違反」として企業の責任問題を追及されることにもなりかねません。録音システムの導入により、企業は従業員を守る具体的な対策を講じていることを明確に示せるため、安全配慮義務の履行にも寄与します。
メリット4:奨励金や補助金の対象になりうる
通話録音システムの導入は公的な支援制度の対象となるケースも増えています。2025年7月時点では、東京都と名古屋市において企業のカスハラ対策を支援する制度が設けられており、いずれも通話録音システムの導入が奨励金・補助金の支給要件に含まれています。
- 東京都の奨励金制度:都内の中小企業(従業員300人以下)を対象に、カスタマーハラスメント対策マニュアルの作成と「録音・録画環境の整備」などの実践的対策を行った企業に対し、40万円の奨励金を支給する制度です(申請期間は2025年6月30日〜8月8日)。
- 名古屋市の補助金制度:「中小企業カスタマーハラスメント対策支援事業」が開始予定です。これは、カスハラ対策に取り組む中小企業に対し、管理用カメラ導入費、通話録音装置導入費、マニュアル作成に要する謝金などの経費を対象に、補助率1/2以内、補助限度額5~30万円の範囲で助成するものです(第1期申請期間は2025年8月1日〜8月29日、第2期申請期間は同年10月1日〜10月31日)。
これらの制度を活用することで、企業は費用負担を抑えながら効果的なカスハラ対策を実現できます。
東京都の奨励金制度については、以下の記事でより詳しく解説しています。
2. 通話録音は自治体も認めるカスハラ対策
通話録音によるカスハラ対策は、公的機関においても正式に採用される信頼性の高い手法です。実際に複数の自治体が通話録音システムを導入しており、その効果と合理性が公的に認められていることを示しています。
複数の自治体が通話録音を行っている
自治体レベルでの通話録音の導入は、カスハラ対策の有効性を示す重要な指標と言えます。公的機関が職員保護のために税収を使って導入を決定している事実は、通話録音の効果と必要性を裏付けるものです。
以下の表は、実際に通話録音システムを導入している自治体の具体的な取り組み例です。
これらの事例が示すように、自治体における通話録音導入は一時的な対症療法ではなく、職員の安全確保と行政サービスの質向上を目的とした戦略的な政策判断として位置づけられています。市民から「なぜ録音するのか」といった声を受けることもある様子ですが、カスハラ防止や職員の通話品質の向上など、通話録音のプラス面について説明し、理解を得る取り組みが行われています。
全国的に自治体での通話録音導入は拡大傾向にあり、上記以外にも複数の自治体で導入が進んでいることから、公的機関におけるカスハラ対策の標準的な手法として浸透しつつあります。
奨励金・補助金の支給要件にもなっている
通話録音システムの導入は単に自治体が実施しているだけでなく、公的な支援制度における支給要件とされています。
前セクションでもご紹介しましたが、東京都の奨励金制度では「録音・録画環境の整備」が支給要件の1つとして明記されており、名古屋市の補助金制度でも通話録音装置導入費が補助対象経費として位置づけられています。
こうした制度設計は、行政機関が通話録音をカスハラ対策の基幹的な手法として評価していることを明確に示しています。
3. 通話録音に違法性はない?
カスハラ対策として通話録音を検討する際、「法的に問題はないのか」と懸念する方は少なくありませんが、通話録音は適切に実施する限り法的問題はありません。ただし、いくつかの注意点を理解しておくことが重要です。
ここからは通話録音の法的側面について、以下の5つのポイントから詳しく解説します。
- 無断の通話録音でも違法性は低い
- 利用目的を事前通知するのが望ましい
- 録音データは適切に管理する必要がある
- 海外との通話は違法になることもある
無断の通話録音でも違法性は低い
通話録音を行うこと自体に違法性はありませんし、事前に通知せず顧客に無断で録音した場合でも、原則として合法と言えます。通話録音が違法だと考える方がいる理由のひとつとして「許可なく会話を録音する行為」と「悪いイメージが付いている盗聴」を同一視していることが挙げられますが、実際には以下のような違いがあります。
▼盗聴と秘密録音の違い
- 盗聴:第三者間の会話を同意なく録音・音声傍受すること
- 秘密録音:会話している同士において、一方が相手から同意を得ずに録音すること
企業における通話録音は、このうちの「秘密録音」に該当します。2000年7月の最高裁判所の判決では「詐欺の被害を受けたと考えた者が、相手方の説明内容に不審を抱き、後日の証拠とするため、相手方との会話を録音することは、たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであっても、違法ではなく、その録音テープの証拠能力は否定されない」とされていることから、秘密録音の違法性は低く、さらに裁判時の証拠として認められる可能性も高いと言えます。
利用目的を事前通知するのが望ましい
無断の通話録音の違法性は低いとは言え、円滑に証拠を収集し、顧客との後のトラブルを避けるためにも、通話録音データの利用目的は事前に通知するのが望ましいと言えます。
また、個人情報保護法第21条では「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない」と定められています。
以上のことから、通話録音を導入している企業の多くが「この通話はサービス向上のために録音させていただきます」といった事前アナウンスを実施しています。これは法的義務を果たすと同時に、顧客との信頼関係を維持する観点からも望ましい対応です。
録音データは適切に管理する必要がある
録音したデータが個人情報に該当する場合、個人情報保護法に基づいた適切な管理が求められます。具体的には以下の点に注意が必要です。
▼主な管理要件
- 取得理由を明確にし、その範囲内で利用する
- 録音データの漏えい防止策を講じる
- 適切な保存期間を設定し、期間経過後は確実に削除する
- アクセス権限を制限し、目的外利用を防止する
- 顧客から開示要求があった場合は、遅滞なく対応する
個人情報保護法違反が認められた場合は、行政処分や刑事罰、当該個人情報の本人から損害賠償請求を受けるなどの可能性があるため、適切な管理体制の構築が不可欠です。
海外との通話の録音は違法になることもある
日本における通話録音は合法ですが、国によっては当事者同士の同意を法で義務付けている場合もあります。そのため、「世界中に拠点がある」「国外の顧客とのやり取りがある」といった場合は注意が必要です。
特に、アメリカの一部の州やヨーロッパの一部の国では、通話録音に対して厳格な規制が設けられている場合があります。海外顧客との通話を録音する場合は、対象となる国・地域の法規制を事前に確認し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しつつ、適切な同意取得手続きを整備することが求められます。
なお、電話対応における「通話録音以外のカスハラ対策」について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
4. カスハラ対策に有効な通話録音システムとは?
通話録音によるカスハラ対策を実現するシステムとして、特に注目されているのがIVR(自動音声応答システム)です。このシステムを導入することで、単に通話内容を録音するだけでなく、電話業務全体の効率化を図ることができます。
おすすめはIVR!カスハラ対策に貢献する4つの機能とは?
IVRは、電話におけるカスハラ対策で求められる複数の機能を内包したソリューションです。具体的には、以下に示す4つの機能がカスハラ対策に貢献します。
機能1:通話録音・テキスト化
IVRには通話内容を自動で録音し、文字に起こす機能が搭載されています。これにより、カスハラの証拠保全だけでなく、内容の迅速な確認や分析が可能になります。
また、「通話内容をAIが要約してくれる機能」や「関係者に自動で通知する機能」を備えたIVRを導入することで、従来は手作業で行っていた通話内容の要約・報告作業も自動化できます。
機能2:自動音声ガイダンス
IVRは、電話相手に対して「音声案内に従ってご希望の番号を押してください。製品に関するお問い合わせは1を、サポートは2を」といった音声ガイダンスを案内し、プッシュボタン操作に応じて、担当者への転送や特定の音声案内が実行される流れで機能します。
この自動音声ガイダンス機能を活用することで、人に転送される前に、顧客に通話録音を行う旨を通知できます。例えば、「この通話はサービス向上のために録音させていただきます」といったアナウンスを案内することによって、カスハラ行為を心理的に抑止する効果が期待できます。
機能3:SMS送信
SMS送信機能は、電話相手の携帯電話番号にテキスト情報(WebサイトのURLなど)を送信できる機能です。この機能を活用することで、感情的になりがちな電話でのやり取りを文字による冷静なコミュニケーションに切り替えることができます。
例えば、カスハラに発展する恐れのあるクレーム電話についてはすべて問い合わせフォームからご意見・ご要望を受ける運用にすることで、従業員が直接電話対応をする状況を避けられます。
機能4:ブラックリスト
ブラックリスト機能は、特定の電話番号からの着信を拒否できる機能です。過去にカスハラ行為を行った顧客の電話番号を登録することで、同一人物からの電話による繰り返しのカスハラ行為を遮断することができます。
カスハラ対策と電話業務の効率化を両立するなら「DXでんわ」
「DXでんわ」はメディアリンク株式会社が提供するIVRです。上述した4機能(自動音声ガイダンス、SMS送信、通話録音・テキスト化、ブラックリスト機能)のすべてを搭載しており、電話における包括的なカスハラ対策の実現を支えます。
もちろん、電話対応を自動化・効率化するツールとしても活用可能です。24時間365日の自動応答で人による電話対応を大幅に削減し、従業員が本来の業務に集中できる環境の実現に貢献します。
電話業務の効率化・自動化を図りつつ、カスハラ対策を同時に実現したい方は、ぜひ「DXでんわ」をご検討ください。
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