カスハラは通報していい!
警察や行政への通報・相談基準を解説

カスハラ被害に遭った際、「どこに通報すべきか」「いつ警察を呼ぶべきか」と判断に迷うケースは少なくありません。
本記事では、カスハラの通報・相談先、警察への通報基準、証拠として残すべき内容について解説します。適切な対応で従業員を守り、被害の拡大を防ぎましょう。
目次
1. カスタマーハラスメント(カスハラ)とは
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や取引先からの暴行、脅迫、暴言、不当な要求など、著しい迷惑行為を指します。厚生労働省は「顧客等からのクレーム・言動のうち、要求内容の妥当性に照らして、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。
具体的には、以下のような行為がカスハラに該当します。
- 身体的な攻撃(暴行、傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫、侮辱、暴言)
- 威圧的な言動
- 長時間の拘束
- 執拗な要求
これらの行為は刑法や軽犯罪法に抵触する可能性があり、悪質な場合は刑事事件として扱われることもあります。
通常のクレームとカスハラの違いは、要求内容の妥当性と手段の相当性にあります。商品やサービスの改善を求める正当なクレームはカスハラに該当しませんが、商品に問題がないにもかかわらず過剰な要求をする、土下座を強要する、長時間拘束するといった行為はカスハラとみなされます。
2. カスハラ被害に遭ったときの通報・相談先
カスハラ被害に遭った際は、状況の緊急性に応じて「通報」か「相談」かを判断し、適切な窓口に連絡することが大切です。
- 通報:暴行や脅迫など従業員や他の顧客の安全が脅かされている場合
- 相談:緊急性は比較的低いものの、対応方法の相談や法的措置の検討が必要な場合
以下では、主な通報・相談先を紹介します。

弁護士
弁護士は、カスハラの法的対応を検討する際の相談先です。警察が対応できない民事事件や、刑事事件に至らないケースでも、弁護士であれば個別具体的な法的対処が可能です。
具体的には、カスハラ行為者への警告書の送付、損害賠償請求、接近禁止の仮処分、営業妨害禁止の仮処分など、企業や従業員を守るための法的措置を講じることができます。また、弁護士が窓口となることで、カスハラ行為者も「法的措置を取られる可能性がある」と認識し、不当な要求を控える抑止効果も期待できます。
厚生労働省
厚生労働省では、カスハラ被害に関する複数の相談窓口を設けています。まず、都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」では、カスハラ対策の体制整備や従業員保護について相談できます。企業がカスハラ防止のための雇用管理上の措置や対応マニュアルの整備について不明な点がある場合、専門の相談員から情報提供を受けることが可能です。
また、厚生労働省が運営する「こころの耳」は、カスハラ被害によって精神的なストレスを受けた従業員が利用できる相談窓口です。電話、メール、SNSで相談でき、メールは24時間受付に対応しています。
警察
警察は、緊急性の高いカスハラ被害に対応する通報先です。暴行、傷害、脅迫、器物損壊、不退去など刑法に該当する行為が発生している、または発生する危険がある場合は、躊躇せず110番通報してください。
緊急性は高くないものの、繰り返されるカスハラや今後エスカレートする可能性がある事案については、警察相談専用電話「#9110」を利用できます。#9110では、被害届の提出を検討すべきか、どのような証拠を残すべきかなど、対応方法についてアドバイスを受けることができます。通報や相談の際は、日時、場所、行為の内容、被害状況を具体的に説明できるよう準備しておくとスムーズです。
3. カスハラ被害を相談する流れ
緊急性がそれほど高くないカスハラ被害については、段階的に対応を進めます。証拠を確保し、専門家と連携しながら、必要に応じて被害届の提出へと進めていきます。ここでは、計画的に対応を進めるための基本的な流れを解説します。
証拠を用意する
カスハラ対応において証拠の確保は重要なステップです。証拠がなければ「言った」「言わない」の水掛け論になり、法的措置や警察への相談も困難になります。以下のような証拠を可能な限り確保しましょう。
▼記録すべき主な証拠
- 通話の録音データ(電話でのカスハラの場合)
- 防犯カメラの映像
- カスハラ行為の記録(日時、場所、相手の特徴、発言内容、行為の詳細、対応した従業員名、目撃者など)
- メール、SNS、メッセージアプリのスクリーンショット
- 怪我や器物損壊の写真
なお、録音する際は「この通話は品質向上のため録音させていただいております」といったアナウンスを入れることが望ましいです。また、カスハラ行為の内容は時系列でメモや報告書として残し、後から状況を正確に説明できるようにしておくことが重要です。
弁護士と連携する
証拠が揃ったら、弁護士に相談して法的な対応方針を決めます。弁護士は証拠の評価や、どのような法的措置が取れるかを判断してくれます。顧問弁護士がいる企業であれば早めに相談し、いない場合は各地の弁護士会や法テラスを通じて、カスハラ案件に詳しい弁護士を紹介してもらいましょう。
▼弁護士と協議する主な内容
- 現状の整理と証拠の法的評価
- カスハラ行為者への警告書送付の検討
- 損害賠償請求の可能性
- 接近禁止の仮処分申立ての検討
- 警察への被害届提出の是非
弁護士のアドバイスを受けながら対応を進めることで、企業として一貫性のある対応が可能になり、法的リスクも軽減できます。また、弁護士が窓口となることで、カスハラ行為者への抑止効果も期待できます。
被害届を出す
カスハラ行為が犯罪に該当する可能性がある場合は、警察に被害届を提出できます。被害届は犯罪被害に遭ったことを警察に申告する手続きで、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、恐喝罪、威力業務妨害罪、器物損壊罪などが該当します。
▼被害届提出時の準備
- 録音データや防犯カメラ映像などの証拠資料
- 被害状況の記録や写真
- メールやメッセージのスクリーンショット
- 事前の弁護士への相談内容
証拠を揃えて被害届を提出することで、警察が捜査を開始し、悪質なケースでは刑事事件として立件される可能性があります。被害届が受理されれば警察から捜査状況について連絡が入り、必要に応じて追加の事情聴取が行われることもあります。
4. カスハラを通報する基準
カスハラ被害が発生した際、警察への「通報」が必要かどうかの判断に迷うケースは少なくありません。ここでは、緊急性が高く、即座に110番通報すべき状況について解説します。
基本的な考え方として、従業員や他の顧客の安全が脅かされている場合は躊躇せず警察に通報することが重要です。具体的には、刑法や軽犯罪法に該当する以下のようなケースが警察への通報対象となります。
▼通報すべき主な犯罪行為
- 暴行罪・傷害罪:従業員に対して殴る、蹴る、物を投げつける、突き飛ばすなどの暴力行為
- 脅迫罪:「殺す」「痛い目に遭わせる」など、生命・身体・財産に対する害悪を告知する行為
- 恐喝罪:脅迫を手段として金銭や物品を要求する行為
- 威力業務妨害罪:大声を出して営業を妨害する、長時間居座って業務を妨げるなどの行為
- 器物損壊罪:店舗の備品や商品を故意に壊す行為
- 不退去罪:退去を求めても正当な理由なく店舗に居座り続ける行為
これらの行為が発生している、または発生しようとしている場合は、現場の判断で直ちに110番通報してください。通報を躊躇することで被害が拡大したり、他の顧客にも危険が及んだりする可能性があります。
また、その場では大きな事件に至らなくても、過去に同一人物から繰り返しカスハラを受けている場合や、行為がエスカレートする兆候がある場合は、警察相談専用電話「#9110」に相談することをおすすめします。
5. 電話のカスハラ対策なら「DXでんわ」
ここまで解説した通報・相談の対応に加えて、カスハラ被害を軽減し証拠を確実に残すための対策も重要です。特に電話でのカスハラは、対面と比べて相手が匿名性を感じやすく、より攻撃的になりやすい特徴があります。また、録音がなければ「言った」「言わない」の証明が困難になります。こうした電話カスハラへの対策として、電話の自動応答システム「DXでんわ」が有効です。
DXでんわは、かかってきた電話に自動音声で対応し、用件に応じて適切な担当者へ振り分けるIVR(自動音声応答システム)です。カスハラ対策の観点から、以下のような機能が役立ちます。
▼DXでんわのカスハラ対策機能
- 全通話の自動録音:すべての通話を自動で録音し、クラウド上で安全に管理。カスハラ被害の証拠として活用できる。
- 音声ガイダンス:一次対応を自動化することで、従業員が直接カスハラ電話を受けるストレスを軽減。
- AIによる要約:録音内容をAIが自動で要約するため、音声を聞かなくても内容を把握でき、記録として残せる。
- 着信履歴の一元管理:すべての着信を記録・管理できるため、繰り返しカスハラを行う相手を特定しやすくなる。
- 営業時間外対応:営業時間外の電話にも自動で対応し、翌営業日に確認できる。
DXでんわは初期費用0円、月額2,980円から導入でき、最短3日で運用を開始できます。また、14日間の無料トライアルも用意されているため、まずは自社の電話対応でどのように活用できるか試してみることが可能です。
電話でのカスハラ対策は、従業員の心理的負担を軽減し、証拠を確実に残すことが重要です。DXでんわを導入することで、カスハラへの備えを強化しながら、電話対応業務全体の効率化も実現できます。
よくある質問
カスハラをどこに通報すればよいですか?
緊急性によって通報・相談先を使い分けます。暴行や脅迫など従業員の安全が脅かされている場合は110番通報してください。緊急性が低い場合は警察相談専用電話「#9110」、法的対応を検討する場合は弁護士、企業の対策体制については厚生労働省の総合労働相談コーナーなどに相談できます。
カスハラは警察を呼んでもいいですか?
はい、問題ありません。暴行、傷害、脅迫、器物損壊、威力業務妨害、不退去など刑法に該当する行為があれば、躊躇せず110番通報してください。従業員や他の顧客の安全が脅かされている状況では、速やかな通報で被害拡大を防ぎましょう。
カスハラの暴言の例は?
「殺すぞ」「痛い目に遭わせる」といった脅迫的な発言、「無能」「バカ」など人格を否定する侮辱的な発言、「土下座しろ」「責任者を出せ」といった威圧的な要求などが該当します。これらは精神的な攻撃として、カスハラに該当する可能性があります。
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