コールセンターとは?定義や種類、業務内容を解説
コールセンターの立ち上げを視野に入れているものの、「コールセンターがどのようなものか、まだ完全には理解できていない」という方も少なくないでしょう。コールセンターを設置するかの最終判断を納得感のある状態で行うためにも、まずはコールセンターの全体像を把握することが大切です。
本記事では、コールセンターの定義や業務内容といった基礎知識のほか、立ち上げの手順やよくある課題など、コールセンターを網羅的に理解するためのさまざまな内容をご紹介します。
目次
1.コールセンターとは
まずは基礎知識として、コールセンターの定義や種類について解説します。
コールセンターの定義
日本コールセンター協会(CCAJ)によると、コールセンターは以下のように説明されています。
顧客や消費者のインバウンドやアウトバウンドの電話応対を行う拠点・窓口のこと。
出典:コールセンター/テレマーケティング用語集|一般社団法人日本コールセンター協会(CCAJ)
よりシンプルに表現すれば、コールセンターは「電話で顧客対応を行う窓口や拠点」と言えるでしょう。顧客からの問い合わせ対応やクレーム処理、営業のためのアポイント取りなど、業務内容はさまざまです。
コールセンターの規模も大小さまざまで、10人程度の少人数で運営するケースや、100人以上の大人数で運営するケースもあります。また、自社でオペレーターを直接雇用している企業もあれば、外部にコールセンターの一部またはすべてを委託している企業もあり、自社の環境や戦略に応じて、さまざまな形態が取られています。
一般的に、コールセンターは「設置形態」と「業務内容」の2つの視点に分類でき、それぞれで細かく種類分けすることができます。以下、それぞれの視点で分類したコールセンターの種類について、詳しく解説します。
【設置形態別】コールセンターの種類
まずは、「設置形態」で分類した場合のコールセンターの種類をご紹介します。設置形態で分類すると、コールセンターは以下の4タイプに分けられます。
拠点型
コールセンター専用の拠点で業務を行うタイプです。拠点型には下記のような特徴があります。
・拠点内にコールセンター機能が集約されているため円滑な情報共有ができ、業務効率が高い
・拠点が1つしかない場合、災害発生時や通信障害時は機能が停止する可能性がある
拠点常駐型(インハウス)
自社のオフィス内にコールセンターを設置するタイプです。拠点常駐型(インハウス)には下記のような特徴があります。
・社内で育成を行うため、オペレーターに方針や意図を共有しやすい
・社内にコールセンター機能を設置しているため、部署間の連携が取りやすい
・社内にしか拠点がない場合、災害発生時や通信障害時は機能が停止する可能性がある
在宅型
オペレーターが在宅でコールセンター業務を行うタイプです。在宅型には下記のような特徴があります。
・オペレーターにとっては働きやすい環境であるため、人員確保がしやすく、高い定着率が期待できる
・コールセンター機能が各オペレーターの自宅に分散されているため、災害発生時や通信障害時でも機能が停止しない
・オペレーターとのコミュニケーションが取りづらいため、業務を進行・遂行するためのマニュアル整備や、オンラインでコミュニケーションが取れる仕組みの導入が必須
ハイブリッド型
拠点型または拠点常駐型と在宅型の両方でコールセンター業務を行うタイプです。ハイブリッド型には下記のような特徴があります。
・拠点型(または拠点常駐型)と在宅型のデメリットを相殺しつつ、双方のメリットを得られる
・在宅のオペレーターが一次対応を行い、専門的な対応が必要な場合は拠点型のオペレーターに取り次ぐ、といった運用も可能
なお、災害大国日本においてはコールセンターを多拠点化することでBPO対策を講じることも重要とされています。下記の記事ではコールセンターを多拠点化するうえで押さえておきたいポイントについて解説していますので、詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
【業務内容別】コールセンターの種類
次に、「業務内容」で分類した場合のコールセンターの種類を見ていきましょう。この場合、コールセンターは「インバウンド(受信)」と「アウトバウンド(発信)」の2タイプに分けられます。
インバウンド(受信)型のコールセンター
インバウンド(受信)型は、顧客からかかってきた電話を受けるコールセンターです。以下のような業務内容が挙げられます。
上記の対応内奥に加えて、いずれの業務についても、専門的な対応が必要な場合は「対応できる担当者に電話を取り次ぐ」という役割を担っています。
アウトバウンド(発信)型のコールセンター
アウトバウンド(発信)型は、顧客や見込み客に電話をかけるコールセンターです。以下のような業務内容が挙げられます。
上記からわかるように、アウトバウンド型コールセンターの業務は企業におけるマーケティング活動やセールス活動の一環であると言えます。
コールセンターとコンタクトセンターの違い
上述したように、コールセンターは「電話で顧客対応を行う窓口や拠点」のことです。一方、コンタクトセンターは電話に限らず、メールやSNSといったさまざまな手段を用いて顧客対応を行う部門を指します。
顧客対応を行う機能は同じですが、顧客対応を行う手段が異なる(コンタクトセンターのほうがより多様である)点が、コールセンターとコンタクトセンターの違いと言えるでしょう。ただし、「コールセンター」という呼称でも複数のコミュニケーション手段を用いている企業は存在するため、必ずしも両者が明確に線引きされているわけではありません。
コールセンターとコンタクトセンターの違いについて詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。コンタクトセンターが求められている背景や、構築に必要な機能についてもご紹介しています。
2.コールセンターの役割
コールセンターは企業にとってどのような役割を果たすのでしょうか。コールセンターの主な役割としては、以下の4点が挙げられます。
・電話対応の負担軽減
・顧客満足度の向上
・顧客の声の収集
・売上の向上
以下で、それぞれについて解説していきます。
電話対応の負担軽減
従業員による電話対応の負担を軽減することは、コールセンターが果たすもっともわかりやすい役割と言えます。コールセンターを設置していない企業と比較すれば明らかですが、普段の顧客からの問い合わせをコールセンターのオペレーターに任せることで、従来は従業員が対応していた電話への一次対応を完全に削減できるため、コア業務に集中できる環境が実現します。
顧客満足度の向上
コールセンターを設置するということは、顧客にとって「問い合わせ対応を専門的に行ってくれる窓口がある」という状態です。電話によるコミュニケーションに特化した人員をオペレーターとして配置することで円滑なコミュニケーションが可能になり、顧客の安心感は向上します。適切な対応を行うことで顧客満足度の向上につながり、顧客がリピーター化・ファン化する効果も期待できるでしょう。
顧客の声の収集
アウトバウンド型コールセンターの「テレマーケティング」でも説明しましたが、商品開発などに活かすことを目的に、商品やサービスに関する顧客の声を収集することも、コールセンターが担う役割のひとつです。
また、インバウンド型コールセンターのように顧客の声を意図して収集しない場合であっても、コールセンターに頻繁に寄せられる問い合わせ内容を分析することで、事業活動を改善することもできます。例えば、以下のようなケースが考えられるでしょう。
売上の向上
上述したように、コールセンターには「顧客満足度の向上」や「顧客の声の収集」といった役割を持たせることができます。これらをうまく活用し、顧客に提供する商品・サービスの品質を高めれば売上の向上も期待できるでしょう。
もちろん、マーケティング活動や営業活動に貢献するアウトバウンド型コールセンターを設置し、見込み客の態度変容を促すコミュニケーションを行うことによって、戦略的に売上の拡大を目指すことも可能です。
3.コールセンターに配置するポジション
コールセンターで顧客の電話対応を担うのは「オペレーター」ですが、コールセンターを効率的かつ効果的に運営するためには、さまざまなポジションを配置する必要があります。
以下の表は、コールセンターに配置する主なポジションとその役割を示したものです。コールセンターの規模や運営方針によっては配置するポジションが増減したり、役割が変わったりすることもあるため、あくまで一般的な内容としてご覧ください。
上記以外にも、マネージャーとSVの中間に位置する「ディレクター」や、オペレーターの応対品質を担保する「QM(クオリティマネージャー)」といったポジションを配置する場合もあります。
4.コールセンターを立ち上げる手順
コールセンターの立ち上げは、以下の4ステップで行うことができます。ただ闇雲にスタートするのではなく、目的や目標を明らかにしたうえで、それを達成するための環境や体制を整備することが大切です。
・ステップ1:コールセンターの目的・業務の明確化
・ステップ2:現状調査とKPIの設定
・ステップ3:必要な設備・システムの選定
・ステップ4:必要な人材・就業形態・精度の整備
新たにコールセンターを構築する場合は、上記に加えて「運営・保守費用の妥当性」「通信インフラの安定性」「セキュリティ要件」などを確認し、それぞれ対策を講じる必要があります。
コールセンターの立ち上げに関する詳細な手順は、下記の記事で解説しています。構築・運営にかかる初期設備費や採用費、人件費についてもご紹介しているので、あわせてご覧ください。
5.コールセンター運営のよくある課題
コールセンターは立ち上げて終わりではありません。運営を始めてみたものの想定していた成果が得られなかったり、トラブルが発生したりすることは往々にしてあります。
そうした場合に備えて、これから新たにコールセンターを設置する場合は下記のような「よくある課題」をあらかじめ把握し、対策を検討しておくとよいでしょう。
オペレーターの教育を行っていない
オペレーターのスキルにバラつきが生じるというのは、コールセンター運営においてたびたび見られる課題のひとつです。本人の努力に委ねる手もありますが、オペレーターのスキルはコールセンター全体の応対品質や生産性を左右する要素であるため、組織的に教育を行うべきでしょう。
オペレーターを教育する場合は「どんなオペレーターに育てたいのか」という理想像を明確化したうえで、その実現に向けて「どんな教育項目が必要なのか」を洗い出すことが重要です。もちろん、応対品質の向上や業務の効率化に役立つ教育だけでなく、メンタル面のケアも求められます。
こうしたオペレーターへの教育を実際に行うのは、コールセンターに配置するポジションのひとつとしてご紹介したSV(スーパーバイザー)です。SVがオペレーターを教育するシーンで押さえておくべきポイントは下記の記事で詳しく解説していますので、そちらもぜひご覧ください。
業務効率化・生産性向上の取り組みを行っていない
オペレーターには可能な限り多くの電話対応が求められるほか、顧客からのクレームにも対応しなければならないため、一般的に負担の多い仕事と言えます。それに加えて、非効率な業務がオペレーターにさらなる負担を強いているケースも散見されます。もちろん、オペレーター本人の工夫で効率化できる業務もありますが、個人でできることには限りがありますし、スキルのバラつきを生む原因にもなります。
こうした状況ではコールセンターの生産性が低下するだけでなく、オペレーターの心身が疲弊し、離職を招く恐れもあります。すぐに新たな人材を確保できたとしても、教育にかかるコストと戦力化するまでの時間的ロスは排除できません。KPIの達成や応対品質の向上を目指すことはもちろんですが、オペレーターの定着につなげる意味でも、業務効率化や生産性向上には組織的に取り組んでいくことが必要です。
業務効率化・生産性向上のための取り組みとしては、下記のようなものが一例として挙げられます。
・オペレーターのスキル平準化を図るための教育体制の整備
・業務マニュアルやトークスクリプトの整備・改善
・コールセンター業務の効率化に役立つシステムやツールの導入
6.コールセンターの生産性向上のために管理すべき指標
コールセンターでは通常、最終的な目標を達成するための中間指標としてKPI(重要業績評価指標)を設定し、その達成を目指して活動を行います。何を目指すかによって管理すべき指標は変わりますが、大きく「応対・接続品質を測定するKPI」「業務の生産性を測定するKPI」「顧客満足度を測定するKPI」「マネジメント面を測定するKPI」に分類できます。
このうち、「業務の生産性を測定するKPI」としては、以下の指標が挙げられます。
コールセンターを立ち上げて間もなくは、これらの指標(KPI)を日々モニタリングすることが重要です。KPIの具体的な改善方法や、管理・改善に役立つツールについては下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
7.コールセンター業務を効率化するコールセンターシステムとは?
コールセンターシステムとは、顧客からの電話を受ける際、さまざまなシステムや機能と連携し、顧客の情報や問い合わせ履歴などを表示する仕組みのことです。下記のような機能や仕組みが含まれている(または連携できる)ため、コールセンターシステムを導入することでコールセンター業務の大幅な効率化が期待できます。
上記の他にも、顧客情報や営業履歴を管理・蓄積する「CRM(顧客関係管理システム)」、顧客からの問い合わせにテキストベースで自動返信する「チャットボット」などと連携することで、さらなる業務効率化や顧客満足度の向上が期待できます。
コールセンターシステムについてより詳しく知りたい方は、ぜひ下記の記事も参考にしてください。
8.まとめ
今回はコールセンターの全体像を理解するための内容を網羅的に解説しました。コールセンターを新たに立ち上げる場合は、今回ご紹介した内容を理解したうえで、自社に合ったコールセンターシステムを選定・導入することをおすすめします。
コールセンターシステムは業務効率化や顧客満足度の向上に貢献する重要な仕組みである一方、各社からさまざまなシステムが提供されているため、「どのシステムを導入すればよいかわからない」という方も少なくないでしょう。
そんな方に向けて、コールセンターシステムの選定に役立つ情報を掲載した資料をご用意しました。ぜひ下記の資料をダウンロードしていただき、自社にフィットしたシステムの選定にお役立てください。